FLAMMA FX200のレビュー

ガジェット

更に追記(2023年11月)

FX200のバージョンが1.1.3になり、重大なIRバグが解消されました。
アップデート方法などはこちらの記事で。

重要(2023年6月追記)

Firmware Version1.1.1の初版では頻繁なパッチチェンジ、セーブ時に音が出なくなる(再起動で解消)不具合を確認しています。リグやライブで使うことを少しでも考えている場合は買って後悔する可能性が高く、安いものでもないのでよく考えて購入を検討することを推奨します。

要約

気に入ったリグで遊べばそれでいい

FLAMMAとは

Amazonの格安エフェクターブランドでおなじみの中華エフェクターブランド。深センにあるらしい。
Baiduで調べると「FLAMMAはMOOERがこっそりサブブランドでやってる」との言説があるものの真偽は不明。とはいえFLAMMA FX100とGE150がほぼ同等機能でリリースされていることや、マルチエフェクターを作れるナレッジは簡単に身につかないはずなので何かしらの接点があるのはなんとなく想像が付く。可能性としては本当に同一の運営元が仕切っているか、単純に別の事業者がMOOERの技術やノウハウを買う契約をして独自にカスタマイズしているか(わざわざ筐体・基盤パターンを変えてリブランドする合理性も無く、私は後者の線で見ています)。
公式Twitterアカウントも更新頻度少なめなので、活動を追うのは公式Facebookが良さげ。

FLAMMA FX200とは?

Harley Bentonというドイツの楽器ブランド(運営元は楽器屋なので日本の感覚で言うとイシバシオリジナルブランドみたいな感じ)がFLAMMA FX100と見た目から一緒なDNAfx GITという機種を発売、2021年にはDNAfx GiT Proという機種を発売しており、これがFLAMMA FX200とクリソツなのでDNAfxはFLAMMAのOEMと見て問題なさげ。
これに関してはLeo Gibson氏が本機のレビュー時に言及しており、曰く「本機はタッチパネルを備えてIRのサンプル数を増やすなど、GiT Proを改善したもの」としています。
蛇足ではあるものの上記動画コメントには「hotone even published an article to alarm flamma」というコメントがあり、中国の方でもFLAMMAがあまり行儀の良いことをしていないという認識がある様子。まあアナログの頃から往年の名機にインスパイアされるのが機材界隈でもあるし、本当に法に抵触しているならば法で争うべきだし、ユーザー目線では競争社会でより良いモノを作ってくれればそれでいいんでこの疑惑に関しては目をつぶる事にします。

FLAMMA FX200のスペックについて

FX200は「10のエフェクトスロットに160のエフェクトをアサインできる」と書いているが、AMP+CAB+EFFECT合計が160なようで別に豊富にモジュレーションが入ってるわけではない。
FX200だからといって他社と特別な差異があるわけではなく、Ampero2の様にデュアルエフェクトで2系統の音をミックスできるわけでもなく、シンプルにまとめてきた感じ。
フットスイッチが4スイッチなものバンク上下とA・Bパッチになっているのでタップ用のフットスイッチどこ?とか思うものの、買ってから考えることにした。

Mooer GE200FLAMMA FX200HOTONE Ampero
価格(ざっくり)4万5万5万
発売日2017年末(日本代理店)2022年10月(?)2019年頭(日本代理店)
アンプモデル55(AMP)/26(CAB)58(AMP)/30(CAB)64(AMP)/60(CAB)
エフェクト数7073150+(?)
IR
重量約1.4kg1780g1408g
かんたん比較表。筆者調べにつき情報の確実性は保証しません。

公式ECのPre-Orderで359ドル(送料込)

だいたい5万円だと思っておけばOK。公式ECは登録クーポン10ドル割引が使えるので実質349ドル。
他の商品の販売価格を見る限り1ドル110円くらいのレートでAmazonに出ている(Flamma自身がAmazonのセラーとして登録している)ので、待ってたら4万~4.5万くらいまで落ちる気がするけど今欲しかったのでプレオーダー価格で買った。
なお、JD.comでも2500元で販売しているが日本まで発送していないので購入出来ない。おま国。

期待していた事、懸念していた事

  • FLAMMA FX100という2スイッチのコンパクトマルチの評価が良かった。その頃からキャビの作り込みの幅が広かった(GE200と同等?)のでいじれる幅の広さには期待。
  • タッチ操作で簡単UI、エクスプレッションペダル付きで比較対象は初代AmperoやHEADRUSH MX5等。価格帯もかなり狙ってきてる感じ
  • PC用エディターの操作感がどこまで使えるか?等、誰もTwitterで呟いてないので人柱覚悟
  • 公式ページ死んでるけど大丈夫?プレオーダーのタイマー切れて359ドルで買えるけど本当に大丈夫?未配達のまま破産しない?みたいな不安なところはあった

開封の儀

おまけでカポとフットスイッチカバーが付いてた。カバー付けるとLEDが見えなくなるので即お蔵入り。

ピンクの実物はバーガンディミストより気持ち濃い感じ。ぼっちちゃんカラーって言ったら爆売れしそう。DCケーブルはセンターマイナスで普通のコンパクトエフェクターと同じ経なもの。

RS-090100001。PSEマーク付きだが不適合。

当たり前なんですが今回はFLAMMAの産地直送品なので輸入事業者名が無く、正規のPSE承認を取られたものではないことに注意。
まあ個人輸入で使う分には罰則は無く、型番でググるとMOOER GE200やGE250でも付属しているアダプターと同一なので気にせず使います。むしろMOOERでも使われている電源という事で安心して使える。

持ち運ぶのを考えると互換性のあるアダプターが欲しくなる。ただ9Vセンターマイナスって言っても実際8.5Vしか出なかったり逆に12V以上出る比安定化電源もあるので何も考えずに指したら故障リスクになるので注意。有名所だと上に挙げた1SPOTとかCAJ(終売)とかは9V1A出してくれそう。

中華の闇パワーサプライだと安価で9V1Aが引ける


アイソレーテッドで9V1A出るパワーサプライが国内現行品では存在しない(800mAまで出るやつはある)ので、カジュアルにボードを組むなら1SPOTのデイジーチェーンか上記のような中華パワーサプライ、アナログペダル入れるならPT-5Dとか。せっかくセンドリターン生えてるんだしボード組んで面白そうな空間系を追加しても面白いかもしれない。

プリセットの音

50バンク+ABで合計100種類入ってる(上書きしてもいい)。
アンプが56モデルあってそれぞれこんな使い方ですよって感じだけど、たまにリバースティレイとか飛び道具系のプリセットも入ってる。音は良い。

購入前の疑問点に対する回答

  • 歪みエフェクトを2個並べられるか?
    • 無理。
  • キャビシミュの操作パラメータは?
    • TUBE/LOW CUT/HIGH CUT/SPACE/LEVELのみ。マイク種類とかセンターポジションは省略されてるっぽい。IRベースのモデリングになったから?
  • CTRL/TAPのフットスイッチ無いけど大丈夫?
    • A/Bスイッチでパッチに入ったあと更に押すとCtrl相当、長押しでTAPモードになる。
    • 更にフットスイッチを「FAVORITE」モードにするとその設定をした時のバンクのAB,その次のバンクのABが4つのフットスイッチにアサインされるので曲中で4バンク切り替えるような動きも出来る。
  • PC用エディタとかファームウェアアップデートってどうなってる?
    • 公式サイトから落とせる。ファームウェアは初版が1.1.1でまだアップデートは無い。(特にバグっぽいのは無い。)
  • タッチパネルの操作感ぶっちゃけどうよ
    • スマホに慣れた現代人でも違和感無いレベル。UIは5インチ高解像度で目に優しい。ただしDSP負荷削減のためかフレームレートは落とされている(5~10fpsくらい?)のでスマホほどシャキシャキしてない。まあそんな気にならないけど
  • バンク切り替え時の音切れは?
    • 切れるっちゃ切れるけど、ディレイ/リバーブの残響を持ち越せるモードが設定可能。
  • 面白い飛び道具ある?
    • これにしか無い!っていうのは無い。モノ・ポリでピッチシフターが2種類付いてるくらい。逆にワウはVOXモデリングが無かったりするので
  • エクスプレッションペダルの操作感は?
    • キャリブレーションして綺麗に0-100が出るから不満は無い。踏み味は軽め。フルサイズのワウより小型(ミニワウサイズ?)なのも含めてアナログワウ好きな人は色々言いたい事が出てきそうな感じ。
  • ノイズ乗る?
    • GE200よりローノイズな気がする。クリーンの音は深みがあってキレイなのでAD/DAは
  • DISCO FLIGHTできる?
    • レベル最大フィードバック50で付点8分ディレイとか呼ばれるアレ。
    • 割ときれいなディレイが出る(Digital Delay)しタップで付点8分を出せるから遊べる。ただし多段ディレイは出来ないので御仁のボードを再現することは出来ない

結局買うべきなのかどうか

5万出して買うマルチ、という前提だと中古での購入も考えると+1万で頑張ればBOSS GX100やAmpero 2 Stompが見えてくる。Valeton GP200LTは税込み定価が4.6万なのでポイント還元等を使えばむしろ1万円安く買える。
音の傾向はめちゃMOOERのGE200っぽい、パキっとした良い音が出るんだけど、Warmさ(伝われ)を出すのは少し工夫が必要

あと操作性が最悪で、パッチチェンジでディレイ・リバーブの引き継ぎは出来るんだけどパッチチェンジとCtrlスイッチによるエフェクトのOn/Off自体のタイムラグが酷くて、曲中でパッチを頻繁に切り替えたり、特定のパートでコーラスだけ掛けたい場合盛大に音切れするので端的に言って持ち運ぶもんじゃない。
あとフットペダルは0-100の0から50くらいまで10刻みに可変する感じで、ペダルの精度も悪い(踏み心地もヌチャヌチャする)
あとはCtrlスイッチが独立して存在しないので、押して離してCtrlスイッチが起動する感じなのでこれも操作性最悪。

他のマルチでも当たり前かもしれないけれど、Riot Distortionモデルの歪みがあったりPRS ARCHON等ハイゲイン系のアンプが多く設定されているのが時代の流れを感じて面白い。逆に言うとそれくらいしか褒める所が無いのですが…

長所短所(私見)

長所

  • 唯一無二の見た目
  • 5~7万円台のマルチエフェクターと比肩出来る音質
  • 4フットスイッチの割に挙動をいじれたり、タッチパネルの操作感も含めてUXは○
  • ハイゲイン系のアンプはバリエーション豊富
  • 音の出方はMOOERとやっぱり違う。
  • デフォルトの音が結構良いので、パラメータをいじらずにすぐに弾ける

短所

  • コンプとワウが同じブロックだったり同一ブロックのエフェクトを2個以上繋げない等、2022年のトレンドには追いついていない
  • キャビシミュの設定幅が狭いので(マイクもポジションも選べず距離だけ)、使い方によってはこの時点で駄目かもしれない。
    • たぶんこれのせいで「音が前に出ない」。リード向きの音はIR前提になる
  • 24bit/44.1kHzなのでプロジェクトが48kHzのプロジェクトにデジタルのまま取り込めない
  • IRデータをバンクいっぱいまで入れるとシステム起動に5秒以上掛かる
  • パッチ切替時にドライ音が音切れする
  • Ctrlスイッチが独立して存在しないので、リズムにのってCtrlスイッチを切り替えるのが無理
  • バンクを切り替えてると不意に音が出なくなるケースが存在する
  • フットスイッチの間隔は狭く、エクスプレッションペダルまでも短いのでライブ向きじゃない
  • 日本において輸入代理店が存在しない
  • 先代のマルチFX100も含めてファームウェアの更新実績がFLAMMAにはほぼ無い。将来のアップデートに期待できない
  • 圧倒的知名度の低さ。「よく知らんけどこれMOOERのOEMだよね?」って言われても否定できる材料が無い

マニアックないじり方は出来ず、CPUも貧弱で値段で見た時にライバルに完全に劣る。ただしパッケージとしてのまとまり方は良いので(使える機能に対しては適切なUI/UXが存在する)、愛さえあれば普通に使えるといった感じ。
BIAS Amp用に買い揃えた汎用IR持ってるので、IRローダーとか含めて色々試してみたいですね。